「昭和の喫茶店」を訪ねて

自分にとって大切な想い出のある”喫茶店”がある。そして、そこは”純喫茶”。
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数十年ぶりに訪れたその店は、大阪市の東成区の「かみじ商店街」にある。多感な少年時代を過ごした思い出深い場所である。
たしか当時は”しんみち商店街”とも呼ばれていた。今では、残念ながらご多分にもれない”シャッター通り商店街”となっている。
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アーケード通りに入ってすぐの屋台の店名は”百円屋”だが、売ってるのは250円の”一銭洋食(お好み焼き)”。
この店ではないが、子供の頃、”一銭洋食”には良くお世話になりました。たしか一枚5円の頃だった。( ´ー`)
買い食いしたいのを「後で寄ればいいや。」と、ぐっとガマンして、”純喫茶”へと向かう。
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今回の目的地は、「喫茶むらかみ」さん。木のドアに波板ガラス、タイルの壁、そして”のれん”。何もかも変わってない。( ´ー`)
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ここには、コーヒー好きの父親に良く連れて来てもらった。当時の純朴な子供にはコーヒーは苦いだけの飲みものだったので、いつも店内中央に置かれたショーケース内のケーキを食べていた。ロールケーキがいちばんのお気に入りだった。
父親と楽しく過ごした良い思い出というのはあまりないのだが、この「むらかみ」さんで過ごした一時だけは強く印象に残っているのだ。
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驚くべきことに、当時とまったく変わらない室内。違いは新し目のテーブルセットになって、ショーケースがなくなった事くらいか。
予想通り、テレビ音声が流れる中で高齢の方々が時間を気にせず他愛もない世間話で談笑されていた。
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ヘビースモーカーの父親は、コーヒーをすすっている間も休みなくタバコを吸っていた。この”ABC”マッチで。( ´ー`)
当時も今も、この店に”分煙”などという概念はまったく存在しない。ムカシはみんなそうでしたが。
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いまどき、こんなタイル床の喫茶店なんてないだろうが、良く手入れされていて、信じられないほどキレイに保たれている。
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そして。この店で初めていただいたコーヒーは、フツーに美味しかった。その事実に驚いた。きっと苦味が勝って、風味のあまりないコーヒーだろうという先入観があった。しかし、それなりにコーヒーの味にうるさくなった自分が「悪くない。」と感じたのだ。これはイイ。
注文待ちの客は他にいないのに、コーヒーが出されるまでに割りと時間がかかっていたので、きっとママさんが丁寧に心を込めて淹れてくれているのだろう。父親が、いつも旨そうにちびちびと大事そうに時間をかけてすすっていたのが目に浮かぶ。
砂糖もフレッシュミルクもたっぷり入れていたので味がわかっていたのかどうかは怪しいのだが。( ´ー`)
とにかく、みくびっていて大変失礼しました、「むらかみ」さん。
後で写真を見ながら気づいたのだが、カップやスプーンだって安っぽさはまったくないし、少しもくたびれていない。
入店が12時少し前で「ちょっと遅いけど、モーニングはどうします ?」と聞かれたが丁重にご遠慮した。
ハラは減ってないし、ネットの情報で、トーストの他にまるまる一本のバナナがサービスされるのを知っていたので・・・(;`ー´)
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時間が止まったような昭和のアイテムがキレイに手入れされて、店内のそこかしこで風景に自然に溶け込んでいる。
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現代の設備ではまずお目にかかれない、照明スイッチとコントローラ。
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何の”コントローラ”かというと、天井のこれ。最初は天吊りスピーカーかと思ってママさんに聞いたら、扇風機なのだった。
「汚れて来たので羽根を取ってしまったんやけど、残しておいた方が良かったと、良く言われるのよ。」と快活に笑って説明してくれた。
常連客に愛されて長く続く店は、店主が魅力的だというのが最大の要素だが、この店も例外ではない。
写真を撮らせてほしいと頼んだが、「それだけは勘弁。もうおばあさんやもん。」と笑顔で固辞されてしまった。( ´ー`)
十代の頃の彼女を知っているが、とてもキュートで明るく可愛い女の子だった。今でも常連さんにとってはそうなのだろう。
本人以外は自由に撮影させてもらえたが、ママさんがにこやかに「汚い店だよ。」というのは謙遜で、小物に至るまで隅々まで丁寧に手入れされている事が良く分かったので、自信の裏返しなのだろう。( ´ー`)
当時、親同士もとても仲が良く「娘をぜひ息子さんの嫁に。」と勝手にハナシを進めかけたのを、まだまだ純朴だった当人たちが猛反対して、けっきょく何事も起こらなかったというのも、今となってはとても良い想い出なのである。( ´ー`)
自分の事は最後まで気付いてはもらえなかったが、別に名乗るほどの事もあるまいと、気分良く店を後にした。
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お代は280円だった。メニュー表を見て300円出したのだが、ママさんがにこやかに「今は280円です。」とおつりをくれた。
何だか、まさに昭和の時代にタイムスリップ。純朴だった少年時代を過ごせてもらえた小一時間だった。
あの頃の大切な良き想い出がここにある。癒やしの時間をありがとう、「むらかみ」さん。イイ店でした。( ´ー`)

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